「会社に行けば労働問題ばかり。悩みは尽きないけど、一体どこに相談したらいいんだろう」
- サービス残業
- 不当解雇
- 不当な雇止め
- 退職させてもらえない
- 育児休業を取らせてもらえない
- 有給休暇を取らせてもらえない
- パワハラ、セクハラ、マタハラなどの嫌がらせ
- 正社員と非正規社員の不当な待遇差別 etc
職場では実に多くの労働問題が起こっており、労働問題に関する訴訟等はどんどん増えてきています。
この労働問題を相談する先も多様であり、たとえば以下のような相談先があります。
- 労働基準監督署
- 総合労働相談センター
- 弁護士
各種労働問題や、労働問題の相談先について弁護士が解説します。
労働問題の種類とは?
一口に労働問題とはいってもいろいろな種類があります。
以下で、5種類の労働問題について説明します。
(1)労働時間や休み・休憩に関する問題
労働時間が長かったり休みや休憩が満足に取れなかったりすると、精神的にも身体的にも労働者の負担は大きくなります。
労働時間や休み・休憩に関する労働問題としては、たとえば次のようなものがあります。
- 過度の長時間労働により、脳や心臓、精神に過度の負担がかかり、過労死等を招く
- 労働者には休暇等を取得する権利があるにもかかわらず、企業側が有給休暇や育児休業、介護休業・休暇の取得を許さない
- 休憩時間も、客待ちや電話当番などをさせられていて、労働から解放されていない
(2)賃金に関する問題
労働契約は本来、「労働者が労務を提供することに対して、使用者がお金を支払う」という契約内容のもと、互いに合意して成立しています。
しかし、労務を提供しても賃金を支払ってもらえなかったり、残業時間に応じた賃金が労働者に支払われなかったりといった問題もあります。
たとえば、賃金に関する労働問題としては、次のようなものがあります。
- 課長などの肩書を与えられているが、実際は平社員と同じ仕事をしているにもかかわらず、時間外労働や休日労働の残業代が支払われない(名ばかり管理職問題)
- 固定残業代を支払われているものの、固定残業代に含まれている残業時間を超える残業をしても、追加の残業代が支払われない
- 役職手当を固定残業代として支払っていると会社は主張するが、就業規則や賃金規程などを見ても、固定残業代として支払っているとは記載されていない
- タイムカードを切った後に労働をさせられている(サービス残業)
- 会社都合による休業なのに、休業手当(平均賃金の60%以上)が支払われない
- 賃金について男女差別がある
賃金や残業代を全く払っていない場合であればすぐに発覚しますが、賃金や残業代の具体的な金額は複雑な計算のもと算出されるため、少し低く見積もられている場合には発覚が難しいなどの問題もあります。
(3)職場環境に関する問題
労働時間や賃金に関して問題がなかったとしても、劣悪な職場環境だと心身ともに疲弊してしまいます。
職場環境に関する労働問題としては、たとえば次のようなものがあります。
- セクハラやパワハラ、マタハラなど職場でハラスメントが横行している
- セクハラやパワハラ、マタハラの問題を会社に相談しても、誠意のある対応がなされない
- 労働災害を防止するために必要な措置(アスベスト対策など)が取られていない
- 免許のない者にクレーンの運転などの一定の危険業務をさせる
- 労働災害が起きても労働基準監督署長に報告せずに、隠す
- 労働者に健康診断を受けさせる義務があるにもかかわらず、健康診断を受けさせていない
(4)労働契約に関する問題
労働契約の内容が不当であったり、労働契約を一方的に解除されてしまったりすると、労働者の生活が不安定になります。
労働契約に関する労働問題としては、例えば次のようなものがあります。
- 正当な理由も退職予告手当もなく突然解雇をされてしまう
- 退職をしたいのに、退職させてもらえない
- 退職を申し出ると正当な理由もなく「損害賠償請求する」と言われる
- これまで何度も契約が更新されてきた有期雇用契約の労働者が、次の契約更新の申込みをしたら、合理的理由もなく突然、「契約を更新しない」と言われた(雇止め)
- ハローワークの求人情報に記載された労働条件と、実際の労働条件が違う
(5)その他の労働問題
上記で挙げたよくある問題以外でも、個別に見ていくと非常に多様な労働問題があります。
たとえば、次のような問題です。
- 正社員と非正規の有期雇用労働者との間に、不合理な待遇差がある(同一労働同一賃金違反)
- 人事評価において男女差別や、明らかな嫌がらせの目的がある
労働問題を解決するための相談先
このように多様な労働問題がありますが、労働問題を解決するための相談先とその特徴をご紹介します。
(1)労働基準監督署
労働基準監督署は、その管轄内の企業などがきちんと労働関連の法律を守っているかどうかを監督する機関です。
一定の労働関連の法律違反が疑われる場合に、労働基準監督署へ相談・申告することができます。
労働者からの申告を受けた後、労働基準監督官は使用者からの事情聴取をしたり、事業場へ立ち入り調査するなどして、労働者・使用者双方の主張の整理・確認をしてくれたりすることがあります。
また、一定の労働関連の法律違反の事実が確認されれば、使用者に対し是正や改善の指導などがされることがあります。
ただし、労働基準監督署は、労働者から相談を受けたからといって、当然に調査等の措置を取る義務を負うわけではありません(東京労基局長事件|東京高裁判決昭和56年3月26日)。
労働基準監督署に申告に行く際、労働関連の法律違反をしている証拠を持参すると、労働基準書に動いてもらいやすくなりますので、申告の際は証拠を持参することをおすすめします。
なお、労働基準監督署の取り扱う労働問題は限定されており、相談内容によっては対応できないこともあります。
また、労働基準監督署は、違法状態を是正することが目的であって、個人の紛争を解決することが目的ではないことに注意が必要です。
そのため、労働基準監督署と、申告をした労働者との間で、目指している解決の内容が異なることもあります。
参考:都道府県労働局(労働基準監督署、公共職業安定所)所在地一覧|厚生労働省
(2)総合労働相談コーナー
総合労働相談コーナーは、幅広い労働問題について相談に乗ってくれます。
そのため、法令に直接は違反していない労働条件や解雇に関して相談したいときにも活用できます。
ほかにも、相談したい労働問題がそもそもどの分野に属するものなのかわからず困っているというときにも対応してもらえます。
労働基準法などの法律違反の疑いがある場合は、労働基準監督署などに取り次いでもらうことができます。
また、総合労働相談コーナーでは一部の労働問題につき、助言、指導、あっせんの申し出も受け付けています。
助言・指導は、都道府県労働局が、紛争当事者に紛争の問題点を指摘したり、アドバイスしたりするというものです。
助言・指導で解決できない場合は、あっせんの手続きに移ることもできます。
あっせんとは、「紛争調整委員会」が行うものであり、紛争当事者(パワハラでいえば加害者と被害者)の間に、労働の専門家である、あっせん委員が介入して、話合いをする制度です(助言・指導を経なくともあっせん手続きを利用できます)。
無料で行うことができ、裁判に比べれば簡易迅速にできますが、相手が話合いに応じなければ合意がないまま終了してしまいます。
また、合意には判決と同じ効力はありません。
そのため合意が守られない場合は、別途、裁判するなど、強制的に合意を守らせるための手段を取る必要があります。
総合労働相談センターに寄せられた相談、助言、指導の申出等の件数
2019年度に、総合労働相談センターに寄せられた相談は118万8,340件にも上ります。
また、同年度の助言・指導の申し出は9,874件、あっせんの申請は5,187件です。
実に多くの労働問題の相談等が総合労働センターに申し出されていることがわかります。
なお、個々の労働者と事業主との紛争に関しては、相談、助言、指導ともに、いじめや嫌がらせの労働問題が一番多くなっています。
参考:「令和元年度個別労働紛争解決制度の施行状況」を公表します~「いじめ・嫌がらせ」に関する民事上の個別労働紛争の相談件数が8年連続トップ~|厚生労働省
(3)労働組合
労働組合に対して相談するということは、ある意味社内で解決を図るということになりますが、多くの労働者が組合に所属していると会社に対する交渉力が強まり、希望する労働条件を実現しやすくなります。
自由度は高いため、法令違反に限らず、よりよい条件を提示したい場合などにも相談するとよいでしょう。
ただしあくまで会社との交渉によるものであり、その内容が実現するとも限りません。
(4)弁護士
公的機関は中立的な立場であるため、必ずしも相談した労働者の味方になるというわけではありません。それに対して、弁護士に依頼すれば、代理人として労働者の味方になって動いてくれます。
また、弁護士には、公的機関のような管轄がないため、労働問題に対して広く対応することができます。
公的機関との最も大きな違いは、今まさに直面している個別の労働問題に対して、依頼者の方の味方となって、相手方との交渉や訴訟提起等を行ってくれる点です。
弁護士に依頼すると、基本的に費用はかかりますが、個別の労働問題を解決するには、有効的な手段と言えます。
弁護士に労働問題を相談するメリット5つ
弁護士に労働問題を相談するメリットは次の5つです。
- 労働者本人の代理人として会社や社長、上司と直接交渉してもらえる
- 依頼者である労働者の主張したい内容や要望を適切に会社に伝えることができる
- 証拠の収集に関するアドバイスを得られたり、証拠によっては収集作業を代わりに依頼できたりすることもある
- 裁判所に出向く必要のある手続きも依頼できる。通常の訴訟手続の場合は、基本的には弁護士が代わりに出廷してくれる
- 労働問題の相談だけであれば無料という法律事務所もあり、相談のみで解決することもある(ただし、相談内容による)
弁護士に相談されるよくある労働問題
弁護士に相談される労働問題としてよくあるのは、例えば次のものです。
- 残業代請求
- 退職代行(退職申し出などを専門家が代行する手続)
- 不当解雇
- 雇い止め
- 内定取消し
- 労災
自分一人では解決が難しくとも、労働問題を弁護士に相談することにより、解決できることもありますので、まずは弁護士に相談することをおすすめします。
相談料が無料の法律事務所と有料の法律事務所がありますので、事前に相談料について確認しておくとよいでしょう。
ホームページに相談料が記載されている法律事務所もあります。
【まとめ】個別の労働問題は弁護士へ相談することをおすすめします
労働問題には、次のようにさまざまなものがあります。
- 労働時間や休み・休憩に関する問題(長時間労働など)
- 賃金に関する問題(残業代の未払いなど)
- 職場環境に関する問題(危険な職場環境の放置など)
- 労働契約に関する問題(解雇、雇止めなど)
- その他の労働問題
これらの労働問題を相談する先としては、次のものがあります。
- 労働基準監督署
- 総合労働相談コーナー
- 労働組合
- 弁護士
それぞれにメリット・デメリットはありますが、弁護士に依頼した場合、依頼者の方の味方となって、直接会社と交渉したり訴訟提起などをしてくれるため、個別の問題を解決するのに有効です。
弁護士によく相談される労働問題は、次のとおりです。
- 残業代請求
- 退職代行(退職申し出などを専門家が代行する手続き)
- 不当解雇
- 雇い止め
- 内定取消し
- 労災など
弁護士へ相談するにあたり、先に労働基準監督署に行かなければならないといった順序はありません。
労働問題でお悩みの場合は、早い段階で弁護士に相談することをおすすめします。
※現在アディーレでは、残業代請求を含む労働トラブルと、退職代行のみご相談・ご依頼をお引き受けしております。 残業代請求と退職代行に関するご相談は何度でも無料ですので、お気軽にお問合せください。
弁護士に相談に来られる方々の事案は千差万別であり、相談を受けた弁護士には事案に応じた適格な法的助言が求められます。しかしながら、単なる法的助言の提供に終始してはいけません。依頼者の方と共に事案に向き合い、できるだけ依頼者の方の利益となる解決ができないかと真撃に取り組む姿勢がなければ、弁護士は依頼者の方から信頼を得られません。私は、そうした姿勢をもってご相談を受けた事案に取り組み、皆様方のお役に立てられますよう努力する所存であります。